8月。
岳を含むバイトの仲間と
夏の大きなロックフェス、いわゆる夏フェスにいこうと言う話が出た。
岳がどこからかチケットを持ってきて、みんなからおおいにもてはやされた。

岳は鼻の穴を広げて喜んでいた。

当日の太陽は漫画みたいにカンカン照りで、真っ青な空に白い雲がプカプカと浮かんでた。

「写真撮ろうぜ写真!」

ホール入り口担当の真人(マナト)。
優しくてバカで、いい奴で。私はいつもつるんでいる。
熱くて眩しい、ヒリヒリするような太陽の下。私たちは笑い
写真を撮った。
口を開けすぎて砂が入り
笑いすぎて背中がいたくなるほどだった。

人が溢れ返るような会場内は、夏の熱気をより強くする。

汗をタオルで拭くことも忘れて私たちは大好きなアーティストの前ではしゃぎ回る。
地面から吹き上がる砂も
知らない人とぶつかる体もなにも気にならなかった。
夏とは素晴らしいと思う。

「あつが夏いぜ!」と岳が叫んだその時だけは、何だか涼しい風が吹いた。