サボテンの王子様

「これで俺が陽子のサボテンだってわかっただろ?」


まともそうな青年がさらっとそんなことを言う。

サボテン…(笑)


にわかに信じがたいことではあるが、受け入れないわけにはいかなかった。


あれから私にまつわる色々な話を聞いたが

サボテンにしか言ってないことをこの男は言ってのけてしまった。


二年分の私の話。
いくら盗聴器をつかったって、ストーキングしたって無理。


もうこの男を自称サボテン男からサボテン男へと認めるほかなかった。

私の弱味を全て知っているなんて恐ろしいにもほどがある。


現実的な事実と非現実的な現象に、私は頭を抱えざるをえなかった。

でもやっぱりこんなの



「…しんじられましぇーん」


「ああん? 陽子はまだ自分の恥ずかしい話聞かされたいの?」


「っく やめてくれええええええええええ!!」



顔がほてる。
自分の恥ずかしい話を他人からされて喜ぶ類の人間じゃない。


「信じるしかねーだろが、ここまで聞かされたら」


サボテン男がふふっと勝ち誇ったように笑う。


「…君がサボテンだったってことを信じてはいるんだけど。理解が追い付かないんだよ。」


幻覚か夢か…
つねった頬は確実に痛かった。