親父から聞いた言葉は疑った。『結婚』という言葉がまさか出てくるとは…。
しかも、俺がコーヒーを渡した相手と結婚なんて。
彼女の名前は大翔から聞いていた。『古里 琴葉』。

俺は彼女と結婚しても愛さない。愛せないな。と伝えた。
これは本当の事。裏切られたあの日から誓った…………。
いくら、政略結婚だとしても愛すことはしない。
それでもいいかと聞いたら彼女は「私はいいです。」と答えた。
いま思うと彼女には可哀想な事をしたと改めて思った。
好きな人と結婚して、幸せになりたいと思ったであろう。
でも、親たちの意見で結婚させられるなんて、誰もが『ひどい』と言うだろう。

「親父、俺は親父のことはもう、信じません。いくら、後継ぎが必要だからといって赤の他人と政略結婚だなんて、考えられない。俺は彼女と結婚しても
愛しません。」
「ふっ。お前も自分の意見を言えるようになったな。だが、お前はいつか、
後悔するぞ。いつか、あの彼女を愛する時が来る。母さんと私はこれで
やって来たんだから。今はそうやっていっとくがいい。廉、もっと、自分と
向き合え。」

俺には親父の言葉など今、響かなかった_________。
あとから、この親父の言葉が現実になるなんて思いもしない。