それから碧の遺体が生家である葉月家に戻されたのは翌日だった。

紅莉は虚ろな目で葉月家の門を叩いた。

中から出てきたのは碧の母で、幼い頃、紅莉の事もとても可愛がってくれたのだった。


紅莉の様子を見た碧の母は、彼女を碧の元に案内すると静かに部屋を出て行った。

「碧さん…」

呟いた紅莉の言葉に応えが返ってくるわけもなく、それはやけに大きく部屋に響いた。


そしてついに紅莉は碧の側に力なく跪き、何の反応もない彼の身体を抱きしめた。

「だから…だから言ったのに…!
 私を選んでくださればよかったのに…!
 そうしたら…そうしたら、こんな事には…!」


そう言って俯く彼女の目からは大粒の涙が後から後から流れていた。