こうなることは分かっていた。


でも…それでも…。


「私、聞きました。
 あの家は今権力争いの真っ最中だと…!
 そんな…そんな所へ…!」

我慢していたのであろう涙がついに赤莉の目から溢れた。

「ごめん…もう…決まった事なんだ…。
 だから…。
 じゃあ、すまないけれど僕はこれから
 忙しくなるからこれで失礼するね」

そう言って立ち去る彼の姿はまるで知らない人の背中のように見えた。