「さーてと。俺、もう失礼しますね?」
みんなの冷やかしが終わって、大分落ち着いた頃にマナ君が一言そう言った。
「おや羽瀬くん。もう帰るのかい?主役は君なのに」
残念そうな部長。
そんな部長や他の周りの人達に、マナ君はふっと艶のある笑みを見せた。
なんとなく。
本当になんとなくだけど嫌な予感が…。
そう思った私の予想は当たっていたらしく、私の腰にマナ君の手が添えられそのまま引き寄せられる。
そして一言。
「この後の誕生日は、俺の大事な桜に祝ってもらうんで」
かっこいいくらいの、不敵の笑みを浮かべて。
「桜。行くよ」と、そう言われて会社を後にした。
私達が出て行った後、その空間はしばらくざわつきや黄色い声が絶えなかったらしい。



