しかし、黒宮はやれていた。
神山は勢いに乗っていた。
「やはり、神山の方が優勢だな」
「フェンシングで世界大会優勝してるからな」
「一方的でつまんなぁい」
ギャラリーからはそんな声が聞こえてきた。
…なによそれ、ズルいじゃん!
「神山!頑張って!!」
あたしはやられている黒宮をただ見ていることしか出来なかった。
あたしには、どうしたらいいのか分からなかった。
「…声援を送らないのですか」
「えっ…?」
いつの間にか、隣には篠原さんがいた。
「あちらをご覧ください」
「その調子よ!神山!!」
「執事はお嬢様に信頼されてこそ闘える」
…信頼。
…あっ、黒宮もさっき言ってた。
『私を信じてください』
その言葉が脳裏によぎる。
「…くっ」
黒宮があたしの方に押されていた。
…嫌だよ、負けるなんて。
…だって、あたしの側にいるって言ったじゃん。
「…勝って」
あたしは柵を掴んだ。
そして、黒宮を見つめた。
「あたしの執事でいてくれるんでしょ!?…だから、お願い。…勝って!」
「かしこまりました」
すると、黒宮は神山を弾き飛ばした。
カシャン!
剣が投げ飛ばされた音がした。
…嘘でしょ!?
急に強くなった…!?
そして、黒宮は素早い動きで神山の喉元に剣が…!
「そ、そんな…!?」
「そこまで!勝者、黒宮!」
「きゃー!澪人様カッコいい〜!!」
ギャラリーから女子の声が聞こえた。
…か、勝った。
あたしは一気に安堵する。

