雨は段々と強くなってきた。
…このままあたしも雨になりたい。
…そう、思っていたときだった。
ザザザッ。
誰かがあたしに傘をさしてくれているのが分かった。
…まさか。
あたしは顔を上げた。
…そこには、黒宮がいた。
「…なんでいんのよ」
「由莉愛様の元にいたいからです」
「お祖父ちゃんに命令されてるんでしょ?早く戻りなよ」
「お断りします」
「…もう、ほっといてよ!」
「お断りします」
…なんなのよ。
なんであたしなんかの執事でいたいのよ…
「私は由莉愛様の執事です。由莉愛様がいる場所が私の居場所です」
「…」
「由莉愛様が雨になるなら、私は傘になりましょう」
…なんでそんなに、あたしに構うの?
…なんでそんなに、優しくしてくれるの?
…執事だからって、そこまでしなくてもいいのに。
「…どんなことでもあたしの執事でいてくれる?」
「もちろんです」
あたしは思った。
自分は今、逃げようとしているんだって。
そんなの、バカみたいじゃん。
だから、あたし…!
「…じゃあ、あたしが闘うって言ったら?」
「ならば私は、由莉愛様と闘うための剣に。お守りするための盾となりましょう」
「…黒宮」
黒宮はあたしに微笑んだ。
あたしのために濡れてくれている。
あたしのためにここまで来てくれた。
…黒宮を信じてみようかな。
「…じゃあ、枯れるまで泣くから。あっち向いてて」
「かしこまりました」
そして、あたしは目一杯泣いた。
…お父さん、お母さん。
あたし、頑張る!
諦めたらそこで終わりだもんね!
だから、どうか見守っててください。