恋するキオク





……長い沈黙

その間、私はずっとすぐ隣にある牧野さんの顔を眺めてた。



だって、圭吾の方なんて怖くて見れないから。

急に曲なんて作らされて、いきなり前日になって主役級のことまでやらされるなんて。

いくら圭吾でも、怒らないわけないよ。



「急で本当に申し訳ないんだけど、うちのクラスの危機なの!
有名な作品だし、そこまで細かく覚えてもらわなくても、だいたいはアドリブでいけると思うし。
今からでもまだ時間あるから、何回か一緒に練習すればさ……」


「…………」




遠くからの足音だけが響く廊下で、何も言わないままの圭吾と向かい合う。

やんでしまった雨のかわりに、窓からは眩しい日差しがラインを描くように降りてきて。

圭吾はそこから視線を外すように、黙って足下を見つめてた。



吹き込む風に圭吾の髪がなびくたびに、私の胸は体中に強い振動を伝えてくる。

気付いてしまったら、もう止めることなんてできなくて。



目の前にいる圭吾のことが、圭吾のひとつひとつの仕草全部が

好きで好きで、仕方なくて。



私はどうして欲しい?

圭吾がカイをやることを
どう思う?



そんな心を読むかのように、圭吾はゆっくりと私の方へ視線を向けてきた。



野崎はどう思うの?

まるで、
そう聞いてるみたいに。



「えっと〜、今まだ5時過ぎたばかりだから。あと一時間は練習できると思うんだけど…ダメかな(汗」



牧野さんも必死なんだけど、圭吾の反応に対してだんだん自信がなくなってきてる。

断わられて当たり前。

そう覚悟の上で聞いてるんだ。



「なんていうか、細かく説明すると長いんだけどさ。竹田くんの彼女が竹田くんを死ぬ役にするのはイヤだとか文句言い出しちゃって。一幕までしかやらないって言ってるんだけど…」


「わかるよ」


「えっ!?」