「じゃ、それだけだから」
牧野さんに曲を渡して、そのまま廊下を戻って行こうとする圭吾。
雨雲が去った空の夕焼けに照らされると、圭吾の髪はオレンジ色に光り輝いて。
その間から見えるピアスが揺れると、まるで空間を刻んで行くかのように、私の目にはその姿が焼き付いた。
おかしくても
良いことなんかじゃなくても
私はもう、
自分嘘をつけなくなってた。
振り向いてほしくて。
優しくなんてなくてもいいから、私に言葉をかけてほしくて。
とっさに椅子から立ち上がり、私は廊下へと駆け出した。
「圭ごっ……」
「米倉くんっ!」
……?
私の声と重なって、いきなり隣に乗り出してきた牧野さん。
「……なに」
圭吾が立ち止まって振り返ると、その目は牧野さんの方を見ているはずなのに
隣にいる私を見られてるみたいで、ドキドキしてくる。
重ならない視線にも、なんだか自然に鼓動のスピードは上がっていって。
呼吸も、詰まるみたいに苦しくて。
でも、今何か言わないと、もうずっとこのままなんじゃないかって…
「圭吾……」
「米倉くん!米倉くんに明日、カイの役をやってほしいの!」
えっ……

