恋するキオク





「困ったなぁ。竹田くん戻って来ないし」


「きっと大丈夫だよ。練習はできてるし、今日はこのまま終わっても明日は…」


「甘いよ野崎さん!今日のことを言ってるんじゃなくて、明日出てくれなかったらどうするのってこと!」


「え、あぁ…そっち」




ユリアのせいで命を絶たれるカイ。

そう思ったから、佐渡さんは私に腹が立ってたんだよね。



そういえば私も、劇の練習が始まった頃は感情をうまく抑えられなくて、勝手に圭吾とカイを重ねて泣いたりしてた。

別に圭吾がカイなわけでもないのに、圭吾に対してカイへの気持ちをぶつけようとしてしまって。



もうあの時から、私は圭吾に惹かれていたのかな。



そう思うとなんとなく分かる。

たしかに好きな人にカイの役なんてしてほしくない。

たとえ劇の中の話だと分かっていても、悲しい運命を背負ったカイにその人の姿が重なったら…




「わ、米倉くん!ちょうど良かった」



ドクンっ



え……、圭吾?



牧野さんの視線を追うと、教室の入り口には静かにたたずむ圭吾の姿かあった。

一瞬だけ目が合ったけど、すぐに逸らされてしまう。



圭吾……



「これ。最後の場面の曲こっちと変えて。最初に渡したやつは二幕まで意識して作ってたから」


「あ、ありがとう。でも全部すっごい良かった!どれ聞いても泣けるんだよねぇ、野崎さん」


「う、うん…」



慌てて何度も首を振る。

でも圭吾は、私の相づちなんか見てない。



「竹田まで泣きそうになるとか言ってたしね〜。あ、それで最後の曲だけ交換すればいいんだよね、分かったよ、ありがとう」