恋するキオク




「佐渡さん、一応竹田くんは見た目の良さでカイの役に選ばせてもらったわけだし、彼女としては結構自慢なんじゃないかなぁ〜。ほら、別に変なシーンがあるわけじゃないし」


「私はそんなこと言ってんじゃないわよ。京介が死ぬ役をするのがイヤなだけ!シュウの役なら構わなかったのに」


「死ぬ……?」



……なにそれ。


この劇の間、カイが死ぬ場面なんてない。

二人が離ればなれになって、お互いが記憶の中で相手を想い続けて。


そこで終わるんじゃないの?



「もしかしてあなた、この物語を知らないで演じてるの?」



ずっと不思議そうに立っている私を見て、佐渡さんが一歩迫ってきた。

私の知らない物語の続き。

いったい何?





「佐渡さん落ち着いて。今回は有名な一幕までしかやらないし、離ればなれで終わるっていう結果は同じだけど、ちゃんと最後は問題ない場面で…」


「普通イヤでしょ?この話知ってたら、絶対観てる間もその先を想像しちゃう。途中で劇が終わったって、最後はどうなるか分かってるから、京介を見てるのも辛くな…るっ……だからイヤなの!」


「佐渡さん……」



泣きながら訴える佐渡さん。

そんなに、イヤなんだ……。



「有香、言わなかったオレが悪い。でももう本番明日だしさ」


「京介のバカっ!」


「ええっ!?そんな…おい、待てって!」



…………






そして竹田くんが佐渡さんを追いかけて行って30分。

どうすることもできないまま、溜め息と一緒に時間を過ごす私たち。



「牧野さん…、この先のお話教えてよ。私全然知らなかった、ここからまだ物語が続いてるなんて」


「えっ、あ…うん……。別に隠すとかそういうわけじゃなかったんだけど、野崎さんが泣き出すと練習止まっちゃうしさぁ、この先の内容知ったらもっと厄介になると思って…」


「うん、いつも迷惑かけてごめん。でも…教えてほしい」


「……わかった」