恋するキオク




暗く落としていた教室の蛍光灯が、何度か点滅をしながら灯される。

みんなのざわめきが、その場の緊張していた空気を柔らかく変えて。



「野崎さんさぁ…、毎回感情入れて泣いてくれるのは嬉しいんだけど、セリフ替えられるとちょっと……。他のみんなが戸惑うし(汗」



牧野さんは苦笑いで台本を丸めた。



「うん…、ごめ…ん…」



いつもなんとなく涙目になってしまうこの物語のストーリーだけど、今日は完全に入り切っちゃってた。

つい、自分の想いまで重なっちゃうし。



「曲も入ってんだから仕方ないよな。オレまで野崎につられて泣きそうになったし」


「は!?竹田まで!?」


「なんだよ!意外そうに」



でも、ホントにそうだよね。

曲が入ると、こんなにも感情まで同調しちゃうんだ。

たぶん、圭吾のピアノだからってせいもあるんだけど。



私は涙を拭って大きく息を吐いた。



「ごめんね、今の所もう一回やらせ…」


「ちょっと京介!どういうことよっ!!」




えっ!?



開いていた扉から突然の声。

私たちの練習場所をいきなり険悪なムードに変えたのは、隣のクラスの佐渡さんだった。



劇の舞台に上がってきたと思ったら、すごい表情で私をにらみ付けて。

京介って…
竹田くんのことか。

でもなんで私が睨まれるんだろ(汗)



「今日発表された各クラスの出し物一覧で確認したら、こんな劇やるなんて全然聞いてなかったし。しかも京介がカイってどういうことよ!」


「あ、あの〜…佐渡さん。そんなに怒らなくてもただの劇だし」



牧野さんがなんとかなだめようと佐渡さんに声をかけるけど…。

そういえば佐渡さんて竹田くんの彼女だっけ。