恋するキオク




出逢いの場面が始まると、心に響くような優しい音楽に胸を打たれる。

作られたストーリーを演じながらも、私は無意識に自分の記憶を重ねようとしてしまって

初めて圭吾を見た時の風景と、その場に漂っていた空気が、狭い教室の中に広がるような感覚だった。



もしかすれば、出会ったそれよりもずっと前にすれ違っていたこともあったのかもしれない。

私たちは同じ学校にいたんだし、同じ場所を歩いていたんだし。



でもその時は、こんな風に圭吾を想う日が来るなんて、想像もしていなかっただろう。

いつから、こうなることが決まってたのかな。




「ユリア、僕はいつでもこの庭にいるから。辛いことや悲しいことがあった時は、すぐにここへおいで」


「カイ…」




少しでも何かに悩んで考え事をしてしまえば、体は勝手に圭吾の姿を求めて。

圭吾の声が聞ける場所へと、動いてしまって。



それでもそんな気持ちを、私は何度も誤魔化してきたんだ。




「私はずっとシュウだけを想って生きてきた。だから、この気持ちはこれからも変わらない」

「ユリア…」




冷めた心と、絶望の曲が流れ出しても、その全てがこんなにも胸に響いてくる。


ねぇ、圭吾。

どうして圭吾は、こんなに深い曲が作れるの?




「わかったよ。幸せにな…ユリア」




どうして圭吾のピアノは、こんなにも私の気持ちを揺らすの?




「カイ……、私…」




届かない場所で涙を流しても、そんなことで運命を変えることはできない。

自分にまで嘘をつき続けるようじゃ、気持ちなんて伝わらない。




「カイ…」




去って行こうとする後ろ姿に手を伸ばし、なびくコートの裾に触れる。

さよならと告げなければいけないなら、やっぱり出逢わない方が良かった。



本当は、言いたかったに違いないんだよ。

きっと…




「カイ、私はカイが好きだよ……」


「ちょ…ちょっと!野崎さん、セリフ違うってば」





私…、圭吾が好きだ。