恋するキオク




「なぁ、陽奈」


「ん?なに?」


「イベントの日さ、終わったらそのままどっか行こうか」


「えっ…?」


「オレずっと忙しかったから、陽奈の相手も全然してあげられなかったし。もちろんオレも淋しかったから。どこか遠いところまで、一緒に行かない?」


「省吾……」



省吾の気持ちが、なんだか痛かった。

私…やっぱりこんな気持ちのまま、省吾と一緒にいていいのかな。

こんな風に思ってくれる省吾の優しさを、このまま受け続けてもいいのかな。



そう思いながら下を向くと、省吾は私を静かに抱き寄せた。



「……ちょっと不安になっただけだよな?しばらく一緒にられる時間が少なかったから…だから、
ほんの少し、気持ちが揺れそうになっただけだろ?」


「……」



言葉も出せないほど、全部が苦しくてたまらない。

離れることって、こんなに辛いの?



「陽奈…、キスしてよ」



私を胸から離し、顔を傾けて少し下から覗き込む。

じっと見つめる省吾の視線が、なんだかすごく切なくて。

私は省吾の肩に手を添えると、伸びるように体を近付け顔を寄せた。



省吾の悲しい顔なんか見たくない。

でも、もう私の中にはきっと……



足音を消す雨音に圭吾の姿が重なっても、私は止まることのないキスを繰り返した。

流れる涙の理由も、何ひとつ分からないままに

私は省吾の肩ごしに見える圭吾の後ろ姿を、ずっと見つめ続けてた。