校舎のあちこちからは、まだイベントの準備をしている声が微かに聞こえてくる。
クラスでの練習を終えて部活に出た私は、教室での圭吾の様子を春乃に話していた。
みんなから距離を置かれていた存在。
でもちょっと関われば、圭吾がそんなに悪い人じゃないってことがみんなにも分かってもらえて。
でもそれと同時に、私だけが知ってた圭吾が少しずつ減っていくから…
「ふ〜ん、で?あんたは米倉くんの何なの?」
「え?何なのって……」
「だって陽奈の話聞いてるとさぁ、なんか彼氏の相談されてるみたいに感じるんだもん。別に省吾先輩の弟だからってただのクラスメイトでしょ?他の女子と仲良くなろうが憧れられようがどうでもいいじゃん」
その通りな事を言われて、背筋にスッと汗が流れた。
そうだよね。
それなのに、私なんでそんなことにやきもち妬いてるんだろう。
圭吾が器用に作り物をこなしていくと、周りにいた女の子たちがわらわらと遠慮がちに近づいていく。
わぁ…とか言う歓声で圭吾を囲んで、圭吾はとくにそれに応えるわけじゃないんだけど、みんなの視線は圭吾にくぎ付けになっていって。
劇をやってる部屋から離れたその場所を、私はつま先を立てながら覗き込んでた。
圭吾にはみんなと仲良くしてもらいたい。
そう思ってたから、
これで良かったんだけど。
でもどこかで淋しい気持ちが、私の胸に痛みを残して。
「米倉くんて悪そうに見えるのに、実際そうじゃないとこがちょっとカッコ良くない?」
そんな声が聞こえるたびに怖くなった。
私が省吾としているように、いつしか圭吾にも誰か特別な子ができて。
その子と手を繋いだりキスをしたりするのかなって。
ううん、もしかしたら茜さんがそういう人なのかなって。
ホント、私が気にすることなんかじゃないのに……
「あんまり良くないよね、そういうの」
「春乃…」
「なんか省吾先輩のこと裏切ってるみたいに見えるもん。私は省吾先輩のことめちゃくちゃ憧れてるし、そりゃあ陽奈が別れることになったって手を上げて喜ぶけど」

