恋するキオク





静かな部屋の中、懐かしい空気に包まれた。

覚えてないような野崎は、ゆっくりと辺りを見渡してたけど

オレが隣に腰を下ろすと、申し訳なさそうに下を向く。



ここで話したことも、ここで約束したことも

全部を思い出せなくても構わないのに、野崎はそれが気になるみたいで

ひとつの迷いを、抱え込んでるみたいで。




「野崎…、オレの気持ち伝わってる?」


「うん…」


「じゃあ、抱きしめて大丈夫?」


「えっ……」




返事も聞かないうちに抱き寄せて、細い身体に想いを伝えた。

今日までのこと、これからのこと

もう二人の間に、壁なんて無い。



迷ってた、あのことだって…




「妊娠のこと、悩むなとは言えないけど、オレが支えるよ」


「圭吾……」


「だってこの子、オレの子だし。野崎がいいなら、オレ…ちゃんと二人とも守るから」


「……っ」




母さんと同じように忘れさせてしまったことを、オレの方が申し訳なく思ってる。

でも省吾が、必死になって野崎を止めてくれて。

二人の大切な証なんだろって、託してくれたから。




 オレの子じゃないよ
 気を失った陽奈を見たら
 オレは何もできなかった

 いろいろあったけど
 大切に思ってたのは
 変わりないし

 医者から話を聞いた時は
 いつの間にって驚いたけど

 お前…守ってく自信は
 ちゃんとあるんだろ?