恋するキオク





長い演奏を終えると、たくさんの拍手に一瞬耳がおかしくなりそうだった。

直接大勢の前で弾いたことなんて、たぶん幼い頃の発表会以来で

それでもこんなに大きな拍手は、経験も無かったし。




そうだ、野崎…




「すごーい!誰?有名人?なんか感動しちゃったんだけど」

「あいつすごいじゃん、プロなんじゃね?」

「ねぇー、まだ聞きたいんだけど他に無いのぉ?」



「あの、ちょっとすみません」



囲まれる人混みを抜けながら、オレは野崎たちがいた方向に少しずつ近づいていく。

ちゃんと伝わったか、どんな風に感じてくれたか

すぐにでも聞きたくて

もっと近くで、その表情を見たくて。




「おい、キミ!素晴らしいね」


「え、あ…はぁ」


「いやぁ、沢くんが言うんだから間違いないとは思ってたけど、本当にいい音を持ってる」


「どーも…」



野崎、どこら辺にいたっけ。

早く行きたいんだけど。



オレが急いでるのも気にせずに、いきなり出てきたあの支配人は話を続けた。



「キミ高校行ってるの?卒業してからでもいいからこっちの世界のこと考えない?」


「えっ!」


「うちの店で定期的に弾いてくれてもいいし、レコード会社にだって話を通したっていい」


「あー…、でも」


「圭吾」



呼ばれて振り向けば、待ちわびていた存在に心が癒される。

そして同時に、確信するんだ。