恋するキオク




強く抱きしめられると、触れ合った前髪がそのまま唇の感触へと変わっていく。

高まるドキドキは、省吾と私の間でどんどん早くなって。

でも……



「ね…省吾。どうしたの?」



いつもの優しい雰囲気じゃない気がした。

省吾の気持ちとか、何を考えてるかとか。そういうことが全然わからなくて。

高い位置から腰を屈めるように抱きしめてくれる腕が、ぐっと強まると苦しくて。



「省吾……ちょっと苦しいよ」



離れようと省吾の胸に手を伸ばしたけど、私の力なんかじゃ動いてくれない。

引き戻されるように腰に手を回されると、また唇は塞がれた。



「んんっ!…省」


「絶対嫌なんだよ」



嫌……? 嫌って何が?

ふいに離れた体。
でもまたすぐに腕を掴まれる。

速くなる呼吸の合間に、省吾は私を見つめた。



「陽奈は可愛いよ。いつでもオレに付いて歩く所とか、腕に絡んで来て、オレのこと笑顔で見上げてくる所とか。
時々ドキッとさせられるような色っぽい仕草も、無じゃ気に笑うとこも……全部が大好きだ」


「省吾……」



そんなふうにちゃんと言われることって、付き合うようになるとなかなかない。

だから、すごく嬉しかったしドキドキした。

それなのに、この空気がたまらなく切なくて。



「それに陽奈は誰にでも優しい。そういうとこも好きだよ。でも……
その優しさが圭吾にも向けられることだけは耐えられない」


「……っ」



省吾……

なんで?どういうこと?

私は別にそこまで考えてないよ。

特別な意味なんてないし、ただ省吾の弟だから……



私が黙って見上げると、省吾は気まずく下を向いた。