恋するキオク




そして翌日、珍しくオレは陽奈から呼び出された。



「陽奈……?」


「省吾…ごめん……っ」




泣きながら謝ってくる理由はわかるけど、本当はそんな大切なことを、一人で決めてはいけない。



子供を…おろすなんて。




「陽奈、まだ慌てなくて大丈夫だから。ゆっくり考えれば…」


「だめ…だめなの……っ」


「陽奈…」




どうすればいい。

何を言えばいい。

オレの中のたくさんの感情が、ぐるぐると渦を巻くように回っていく。



違うんだ、陽奈。

お前はまだ、それを決めるべきじゃない。




「……オレは、反対だから」


「省吾……」



ちょっと冷たい言い方になるかもしれないけど、それでもその答えを今はどうしても止めたかった。



「明日、圭吾の演奏聞きに行くんだろ。決めるのはその後にしてくれよ。オレもいろいろ忙しいから、今はそんなこと考えてられないし」


「…どうして、知ってるの」


「オレが何も知らないと思ってた?呑気なもんだな。別にそれで何かが変わるわけじゃないから、もうどうでもいいよ。勝手に行けばいい。でも……」



陽奈、今は辛いかもしれない。

オレの言葉で、傷つくこともあるかもしれない。



でもそのすべては、お前を想ってのこと。

オレの精一杯の気持ち。

それもいずれ、遠い未来にわかってくれればいい。

だから



「その子は大切な証だ。おろすことなんて許せない。オレの命に代えても……絶対、おろすな」


「…………っ」




オレは強く陽奈に言い聞かせた。






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