恋するキオク




オレは倒れた陽奈を、無理に病院へ連れて行った。

記憶のことなんてもうどうでも良かったけど、身体に不調が残るのは心配だったから。



そして偶然見つけた、
陽奈のスケジュール帳。




「保険証ありますか?」


「あ、ちょっと待ってください」



検査を受けてる陽奈を扉の外で待ってると、すぐ隣に看護士が近づいてきた。

勝手に鞄をあさるのは気が引けたけど、保険証くらいならすぐに見つかると思って…



「……ん?」



パステルカラーのスケジュール帳から、ほんの少しメモ紙がはみ出してる。

見る必要なんてなかったのに、こういう時も運命って複雑で。

オレはそのメモを開いてみた。




「……圭吾か」



日付と場所が書いてある圭吾からの手紙。

オレの知らない場所で、圭吾との関係を続けていたのかって、そう陽奈を疑ったわけでもないけど

目の前にある光景は、誤魔化しようのない事実。



「…っ!」



オレは座っていた椅子の背もたれに拳を叩き付けて、うなだれるように頭を抱えた。

苛ついたのか、それともショックを受けていたのか

自分でもわからないけど、扉から出てきた陽奈に当たるわけにもいかなかったから…




「なんかいろいろ調べられちゃった。待たせてごめんね、省ご…」


「…………」


「省吾、どうかしたの?」



ただ無言で、陽奈を抱きしめた。




なぁ…、オレのものだろ?

陽奈はずっと、オレの隣にいてくれるんだよな?



圭吾のところへなんて
行かないよな……?




そして運命は
一つの方向に定められたんだ。




「…妊娠、してますよ」