恋するキオク




天を仰ぐと、秋の澄んだ夜空にはたくさんの星が光ってた。



オレが野崎と見た景色は、省吾に比べればほんのわずかなのかもしれないけど

切なく見つめた夕焼けも、笑いながら手を伸ばした屋上からの青空も

それはどれもが貴重で、なにひとつ失うことなんてできなくて。




「オレさ…、オレお前が省吾と付き合う前からお前のこと知ってたんだ。……だから何ってわけでもないけど、それからたまに学校に顔を出して見かければ、お前のこと目で追っててさ」




忘れてしまったことなんて、気づかれてもいなかった頃を思えば些細なものだった。

今こうして繋がっていられることや、目には見えない何かをお互いに感じられること。

それだけでも、オレにとっては今までの人生では考えられないくらいの重要な出来事になってて。




「ずっと見てたよ…。届かないって知ってたけど、そんなこと、無駄だからって願いもしなかったけど」




触れ合ってしまえば、抑えることなんてできなくなるのが怖い。

だからいろんな場所に気持ちぶつけて、日常から外れることで余計な考えも打ち消して。



でも野崎は、そんなことに気付きもしないで、平気な顔してオレに近づいて来たよな。

そして結局はそれが、いつの間にかオレの支えになってた。




「ホントは会うたびに辛かったんだ。現実が視界を邪魔して、意味もない期待ばかりが意識とは関係なくちらついて。……お前には、省吾がいたから」




いつか一緒にいることが、当たり前のようになればいいなんて思ったりもしたけど

それがどれだけバカみたいに無謀なことかも思い知らされたし

野崎の中からオレが消えたときは、それをもっと強く感じてた。




「…ねぇ、圭吾」


「いいから黙って聞いてろ」