恋するキオク




店の前で待ち伏せるように立ってた省吾は、オレを誘っていつもの公園に入った。

いろんな場面で視線を合わせた、大きな木に陰るベンチ。




「明後日ライブするんだって? 独奏会…って言った方がいいのかな」


「……なんで知ってるんだよ」


「さぁね。だいたいわかるんじゃない?……それよりさ、その日オレと決着つけようか」


「は?」



省吾はこっちを見るわけでもなく、どこか遠くを見るようにオレに提案してきた。

決着って…何を言ってるんだ。




明後日の夕方には、ずっと準備してきた曲を野崎に聴かせると約束してる。

こんなことになって、それでも来てくれるのかなんてもうわからないけど

結局自分の中では、
行くことしか考えてなくて。

それしか、選ぶ道なんてなくて。



「6時半からだっけ?……それには間に合うようにしてやるよ。行くか行かないかは別としてな」



相変わらず省吾はオレを見ようともしないで、ただ何かを考えながら指先を膝に叩き付けていた。



「どうせ子供のことも知ってるんだろ?陽奈……、なんて言ってた?」


「別に何も…。ただ、悩んでたよ」


「そう……まぁいいけど。とりあえず明後日の放課後、学校裏の倉庫来いよ。場合によっては、オレとお前の最後の話し合いになるけどな」


「…………」



オレが何も返さないと、省吾は立ち上がって振り返った。

その目を見上げると、どこか懐かしような、切なくなるような

そんな雰囲気に包まれる。




あの頃

窓辺のテラスからは
陽射しがさして

いつも磨いてたピアノは
深い黒にツヤをのせてた。





 にぃちゃん、一緒に弾こ

 よし圭吾、連弾だな






「圭吾…、お前陽奈が好きなの?」



「……だったら、何」