恋するキオク




静かな保健室のベッドに寝かされて、省吾は心配そうに私を見下ろす。

ホントに気をつけなきゃ。

確かに最近、いつもこんな調子なんだ。




「具合悪い日は学校休まないと。帰りはちゃんと陽奈の家にも寄るからさ」


「うん…。なんだか省吾には迷惑ばかりかけてるね」


「何言ってんだ。オレは陽奈の彼氏だぞ」


「……うん」



そう言われると、また胸の奥がズキッと痛くなった。



そうだよね。

それなのに私……



「胸、苦しくない?ボタン少し外す?」


「えっ…」




私が返事をしないうちに、省吾の手がスッと胸元に伸びる。

一瞬固まって、私は思わずその手を止めてしまった。



「陽奈…?大丈夫か」


「う、うん。平気だから…」



ドキドキ、ドキドキ
何かが込み上げてくる。


なに…?これ。



「でもリボンくらい緩めといた方が…」


「…っ、やめて」


「…………」





とっさに払いのけた手。

驚いた省吾。



一瞬にして重くなった、その場の空気。



なんか、なんだか…



「陽奈……」




呼吸が、どんどん乱れる。

頭の中がぐるぐる回って、古いビデオフィルムみたいに、薄暗い視界の中に光景が浮かんできて。




(もう分かんないよ。どこまでが愛で、どこからがそうじゃないのか)



これ、どこ…?

ピアノ…?窓…

腕が痛い。



私を見下ろすのは

省吾……



(声は出さないでね、陽奈)

(傷はつけたくないから)

(圭吾はもう、帰って来ないかもしれないよ。悲しいけど……)



いや…やだよ……




その時の感情が、一気によみがえる。

忘れてた記憶。

勝手に溢れだす涙。




「ーーーっ…」





私……、省吾にーーー





「陽奈…何か思い出したの?」


「…………」



真顔で見つめてくる省吾。

私は、必死に首を振った。