恋するキオク





ドンっ!



「きゃっ…」


「っつー…、ごめ…ん…」




ぼんやりしていたせいで、音楽室前の扉で人とぶつかった。

懐かしい感覚に、一瞬ツンと空気が込み上げる。



まるで、あの時みたいだ。




「ごめんねっ!あの…」


「…………」


「…大丈夫?……米倉くん」





よりによって…

いや、違うな。
そういえばそうだった。



オレと野崎は、いつもこうやって出逢ってしまうんだ。

必要な時に、呼び合うように。



野崎はオレにピアノを弾けと言う。

ほんとにいつもストレート。



「……ーっ」




オレは祖父ちゃんのように、自分を抑えて野崎を見守っていけるのだろうか。

見つめれば、不安な表情でオレを見上げてくる。

抱き寄せられない腕も、応えてやれない言葉も


全部を抑えるなんて…



「ごめん…オレもう弾けないから」


「えっ……」



目をそらすと、しゅんと顔を沈ませた。

通り過ぎようとすると、小さな声を震わせた。



抑える…?

無理に、決まってる。




「…えっ!?あ、あのっ、…米倉くん」



言い訳を考えるより先に、体は勝手にその感覚を求めるから。


全部忘れられるなら、
そうさせてくれよ。




「ごめん…、ちょっとだけこうさせて」



オレは野崎を抱きしめた。