恋するキオク




せっかく海外にも繋がるようにしたのに、まだ一度も鳴らない携帯。

治療の邪魔になるとダメだから、最初は予定を知らせてくれるために圭吾からかける約束だった。


圭吾…




「野崎さ〜ん、邪魔なんだけど?」



気がつけばいつの間にか放課後。

周りでは日直の子たちが掃除を初めて、私は腕を引っ張られるように教室を追い出された。



「いるだけで邪魔なんだからさ、少しは気使ってよ」


「…ごめん」


「っとに、どうして野崎さんじゃなくて圭吾くんがいなくならなくちゃいけないわけ?」


「そうよ、なんか野崎さんのせいで学校に来れなくなったって話だけど。どうなってんの?」


「え、そんなことは…」



噂って、どこで始まってどんなふうに大きくなっていくんだろう。

それを最近よく考えさせられる。



机の上に置いていた教科書まで廊下に投げられて、私がそれを拾おうとすると

その手に重なるように、横から一緒に拾ってくれる手が現れた。



「牧野さん…」


「ちょっとやり過ぎでしょ。見てて良い気しないよ」



どうして?



「えー?もしかして牧野さん、野崎さんの味方なのぉ?」


「味方とかそういうんじゃなくて」


「牧野さん、私は大丈夫だから」



なんだかこのままだと、牧野さんまで的にされそう。

私は牧野さんの手からノートを受け取って首を振った。



「なんか無意味でしょ?今さら米倉くんもいないのに、いつまでもこんなこと続けて」


「ちょっとそれどういう意味よ」


「あ、あの…」



牧野さん、気持ちは嬉しいけど
なんかまずいよ〜



「女の子なんだから、言い争いはみっともないと思うけどな」


「米倉先輩っ」


「省吾…」