恋するキオク




「私…圭吾と一緒にいたい…」


「いればいいじゃん、何があったって。誰にも遠慮する必要なんてないよ」



軽く弾むような澄んだ声。

佐渡さんが笑ったとこ、初めて見た気がした。

すごく眩しく感じるのは、竹田くんへの気持ちのせいかな。



辛くなることなんて、最初からわかってて。

キズつく存在ができることだって、ずっとわかってた。

今さらいい人になんてなれないのに、私は何を悩んでたんだろう。



圭吾がいてくれたらいい。

どんなにたくさんの人に憎まれたって、避けられたって

圭吾だけいてくれたらいい。

圭吾しか、見えなくていい。



誰にも認めてもらう必要なんてなかったんだ。



他には、何もいらない。




「ありがとう。佐渡さん」



私は佐渡さんにもう一度頭を下げると、内履きのまま学校を飛び出した。






顔にぶつかる空気が心地良くて。

荒くなる呼吸も平気だった。

いけないことしてるのに、辛いこともあったのに。



私ね、今圭吾に会ったら言いたいことがたくさんある。

胸にしまい切れない想いが
いっぱいで。

言葉だけじゃ、
伝えられそうになくて。



好きだって言いながらも、引っ掛かってたのは周りのせいじゃない。

私に自信がなかったんだ。



「お願い、今日はいて!」



何もかも切り捨てられる勇気。

圭吾のためなら、強くなれる。



角を曲がればあのお店。

脱げそうになる内履きも気にならなかった。

一生懸命になると、恋する気持ちはちゃんとそれに答えてくれるから。




「圭吾!」


「…野崎、わ!」




絶対、会える予感がしてた。

そのまま飛び込んだ胸の中。

微かな香りも、
すごく久しぶりみたい。



「まじかよ…お前学校は?」


「圭吾に言われたくない」


「それはたしかに…」




相変わらずの溜め息。

柔らかい空気と、心地いい感触。




圭吾…

もう、離れたくないよ。