恋するキオク




そう言うと、春乃はふぃっとあっちを向いてしまった。



……そうだったんだ。


でもそうだよね。

省吾の辛い顔見たくないからとか、でも圭吾と一緒にいたいからとか。

自分勝手だったかもしれない。



「…ごめん」


「はぁっ…なんかさ、応援してた自分がバカらしくなってくる。もう…相手してられないから」



足下に抜ける風と影。

春乃がいなくなってからも、私はしばらくそこを動けなかった。



もっと早く春乃に話してたら、違ったのかな。

そんなことしても、意味なかったかな。



スリッパの音が
パタパタと耳につく。


きっと今さら、圭吾のことも何もかも、知らない人なんていないんだろう。

春乃まで、あんな風になっちゃったんだもんね。

何があったとか、どうして知られたかとか、そんなことはもう関係ないんだ。



隠す意味もなくなった。

ただ…誰にも許されないだけ。




教室にいたって、まるで私は空気みたいで。

頼れる人が一人でもいたら、きっと違ってたと思うのに。



話を聞いてくれる人がいないのって、辛いね、淋しいね。

圭吾はずっと、
こんな中にいたのかな。



春乃…ごめんね。

春乃の気持ち知ってるくせに、私平気で省吾のこと話してた。

いつも春乃が明るいから、それほど本気だなんて思ってなくて。

無神経だったね、私。



ホントに、
一人になっちゃったな…





ポンポン…

…?



肩を叩かれて振り向くと、目の前にいきなり内履きを突き付けられた。



「佐渡さん…」