学校にはたまに顔を出すだけだった圭吾だけど、やっぱり約束してたのに来ないとなると心配で。
「どうしてあの時番号聞かなかったんだろー…」
ため息をついたって、居場所はまったく分からなかった。
そして今日も、誰からも声を掛けられることなく時間が流れていく。
「あ…」
下駄箱の扉を開ければ、再び出会ったからっぽの状態に体が重くなった。
内履き…持って帰ればよかったな。
「見て見て、超マヌケ〜」
「恥ずかし〜」
職員玄関から借りた茶色のスリッパは、他生徒の白い内履きの中でよく目立つ。
笑って通り過ぎる子たちを見送ると、そこには真顔で私を見つめる春乃が立ってた。
「春乃…」
裏庭の木々は、初夏の風に優しく揺れて。
時々強く吹くその風に、私は髪を押さえながら春乃の背中を眺めた。
やがて振り向いた表情から届く、冷たい眼差し。
「こんなことさー…わかってたじゃん。それくらい陽奈にだって理解できてるでしょ」
「…そうかな」
私の答えに、春乃の顔は一層険しくなる。
「はぁ?自分をなんだと思ってるわけ?どう考えたっていい気になってるとしか思えないでしょ。
省吾先輩から離れるわけでもないのに、米倉くんとくっ付こうとするし。省吾先輩がどんな想いで…」
「春乃、私別にそこまで…」
「もう誤魔化すのやめてよ!」
「春乃…」
「省吾先輩つなぎ止めたままで、弟にも言い寄ってるって言われてるんだよ。それが省吾先輩にもバレたから、身体で解決させようとしてたとかさ。私はそこまでは思ってないけど、陽奈がちゃんとはっきりさせないからこうなるんだよ」
なんでそんな…
「……両方から想われてればそりゃ文句ないよね。私は、私も含めたいろんな子たちは、何か理由を付けてはちょっとでも近づこうって、話す機会を増やそうって、その一人に振り向いてもらうために必死なのに。
…そんなんで悩まれたって、イラつくだけじゃん。もっと、周りのこと考えなよ…」

