「いや、それでね。小さい頃からよくここに来てたって感じ。二人の仲が良くなさそうなのもずっと昔からなんだ。原因はよく知らないけど」
「やっぱり本当の兄弟じゃないんですか」
「それも聞いたことはないけど…。でもあんなに似てるんだから血は繋がってるだろ。ただ正面から認めてくれる家族はいなかったんじゃないかな。疎外とまでいかなくてもさ」
「圭吾…淋しかったのかな」
「いろいろ我慢はしてたと思うけどね」
沢さんは圭吾がここに来た日のことから、ずっと独りだったこと、茜さんたちに出会って少し変わったこと
そして、自分の作った曲だけを弾き続ける理由。
そんないろんな話を聞かせてくれた。
「あ、コーヒーごちそうさまでした。それと楽器の修理、よろしくお願いします」
「あぁ、またいつでもおいで」
沢さんは本当に優しく笑う。
沢さんみたいな人が、圭吾の近くにいてくれて良かったと思った。
「あ、陽奈ちゃん…って呼んで良かったかな」
「どうぞ」
「うん、圭吾くんのこともよろしくね」
「え…?」
「いや、省吾くんもだけど。圭吾くんも…すごくいい子なんだ」
沢さん…小さい頃から知ってるから、圭吾が大事なんだね。
「はい、知ってます」
私は手を振って店を出た。

