恋するキオク




少女が少年のピアノに惹かれていくのがわかる。

嬉しかった。



でも少女は少年の兄の恋人。

どうしてもっと早くに、少年と出会ってくれなかったのだろう。

無意味なことを悔やんでしまう。




「おや?新しい曲?」


「うん。学校のイベントで使うらしいから。それ用に作ってる」


「でもちょっと悲しい感じだな」


「好きでも一緒になれない二人の話なんだ。どうせ幸せな結末はない」


「へぇ〜、そうなんだ。
…そういえばさ、圭吾くんが自分の作った曲しか弾かないのはどうしてだったっけ」


「え…?」




誰かの作った曲は、その誰かが別の誰かのために作ったもの

そこに込められた想いは、当然その相手にしか通じない

それなら自分の想いは、心は

自分が作ったものでしか、伝えられるわけがない




「君たちが演じるんだろ?君たちの作るものだ。結末なんて決まってないよ」


「……」


「きっと伝わるさ」




迷い続けた独りの少年。

どうか彼の本当の心が、たくさんの人に伝わりますように。

彼自身の存在を、受け止めてくれる人が現れますように。



そしてその相手が…



「私が圭吾のことを聞いたら…変ですか」



きみだったらなって、思うけど。




「圭吾くんを信じてくれないか」

「ずっと圭吾くんの側にいてあげてくれないか」



店主にはその言葉が言えなかった。




***