「審査員特別賞には2年C組の『恋の記憶』を選ばせていただきました」
賞に値すると思ったのは本当だ。
でもこれで、陽奈と圭吾を近づけないこともできるんじゃないかって考えてた。
「では総評を、米倉生徒会長からお願いします」
「はい。えっと、これはちょっと私情を挟んでしまうんですけど…
知ってる人もいると思いますが、主役のユリアを演じてたのは僕の彼女で。そして知らない人が大半だと思いますが、カイを演じてたのは僕の弟で…」
体育館の中に広がるざわめき。
さて、どうなるかな。
「もちろん他の人たちの演技も含めて、二人の気持ちの通じ合いは素晴らしかったと思います。
つい、本当に彼女を弟に奪われてしまうんじゃないかって妬きもちみたいに…。いや、ちょっとすみません。なんか変に不安になってしまって」
オレがちょっと涙を拭うような仕草をすれば、またみんなのざわめきは大きくなる。
あとは、オレが何もしなくたって、動いてくれる女子生徒は必ずいるはずだ。
結城みたいにね。
「本当にいい舞台を見せてもらいました。おめでとうございます」
格好悪いかもしれないけど、今はこれが一番効くと思った。
そしてオレの計算は、間違ってなかった。
主役は再びオレ。
悲劇をまとえば、誰もがオレを味方する。
でもそれに加えて、圭吾のとりまきまで動いてくれるとは思わなかったけど。
何か他にも原因があったのかな。
二人で抱き合う場面でもクラスの奴に見られたとか…?
それは自業自得だけどね。
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「省吾、泣くってなに?」
「そんなに気にすることじゃないよ。それより楽器、オレも店までついて行こうか?」
「……いい」
私は省吾の手から楽器を受け取り準備室を出た。
陽奈、オレは味方だからね。
そう言う省吾の声にも、振り返らなかった。

