恋するキオク





次の日。



私はいつもより少し早めに家を出た。

学校に行けば、圭吾に会える。

別に何日も会っていなかったわけでもないのに、教室の扉を開けるまでの時間が待ち遠しくて。



今日は授業中の圭吾をこっそり眺めよう。

誰にも気づかれないように、声をかけよう。

そして呼び出されたら、そっと屋上まで足を伸ばそう。



そんな想像をしただけで、胸が高鳴った。





「おはよう!」


開いていた扉から教室に入る。

明るい陽射しが窓から光をそそいで、中はほんのり暖かで。



いつもと変わらない。

それなのに…



「……?」



みんなの様子は、なんだか違うように思えた。



「牧野さん、おはよう!特別賞だったって聞いたよ。良かったね」


「あ、うん…」


「良枝ちゃん、おはよう!昨日は…。水野さん。あ、由佳里ちゃん?」



私に対する反応が、なんとなく少なくて。

誰とも目が合わないし、話しかけられる様子もなくて。



それほど期待してたわけじゃないけど、一応私は劇の主役を演じてた。

だから当然、今日はみんなが私に受賞のことを伝えてくれるんだと思ってた。

また喜びの瞬間を持ち上げて、舞台での様子を思い出しながら笑って。



それがなぜか、こんな雰囲気。

どうなってるんだろう。



「あれ…?」



そして自分の席に座った私は、机の中に差し込んだ手をゆっくり戻す。

机の中が、からっぽ。



全部持って帰ってたっけ…

ううん、そんなはずない。

いくつかの教科書は、置いてあったと思う。