恋するキオク




省吾は扉を開けて中に入ると、窓から見えるアーケードに視線をやりながら手招きで私を呼んだ。

私はドキドキしながら、そこへ一歩ずつ近付いて行く。

生徒会室には誰もいなかったけど、それが良かったような不安にさせるような、なんだか不思議な気持ち。



「ほら、晴れたからバッチリ見えるだろ?あのアーケード、下を通るだけじゃわからないけど、上から見ると特別な意味に気づけるように作ってある」



そう言いながら、省吾が私を振り返った。

隣から下を見下ろすと、確かに通った時には気づけなかった形が、そこに象られていることがわかった。



「手…?」


「そうだよ。あのアーケードは上から見ると繋ぎ合う手になってるんだ。誰もがつながりを持って助け合える学校に…なんて、生徒会のメンバーには話してたけどね。ちょっと他のことも考えてた」



そう言うと省吾は、少し窓に背もたれるような格好で、強く私の腕を引いた。

スッと優しく包まれる身体に、体温と鼓動、そして動揺の想いが次第に広がって行く。

やっぱりこのままでは、前に進むことなんてできない。



「省吾…」


「なんかさ、ジンクスとかができたら面白いなって思ってたんだよ。あの下を恋する二人が一緒に通ったら、ずっと幸せでいられるんだとか、そういう感じのさ」



わかる…。
抱き締められる腕が、強くなる感覚。

早くなる呼吸も。



「その最初のジンクスをオレと陽奈で作ったりしたらどうかなとか。そう思ってたけど…。陽奈はオレより先に圭吾と通ってたね」


「そ、それはたまたま…っ」



私が言葉を返すと同時に、省吾は私の後頭部をぐっと押さえ付けてきた。

繰り返されるキスを外そうともがけば、その腕は一層強く私を締め付けてきて。



「でも離さないから。圭吾には、絶対渡さない」


「ちょっ…省吾!ねぇ聞いて。ねぇ…、きゃっ!」



部屋の隅に置かれている長椅子に倒されると、下から見上げる省吾の顔はなんとも切なく見える。

それが辛くて、私はその目をまっすぐ見つめ返すこともできなかった。



「陽奈……、なんでこっち見ないの?もしかして、圭吾ともこういうことしちゃってた?」