恋するキオク




あちこちから聞こえてくる賑やかな声。

三階にある生徒会室までの階段をひとつずつ上がるたびに、屋外イベントの賑やかさは、どんどん遠ざかって行くように感じる。

私は時々そこに立ち止まりながら、省吾に話す時のシチュエーションを何度も頭の中で繰り返していた。



明日、一緒に行けないことをまず省吾に話して。

こう言われたら、こうしよう。
こう聞かれたら、こう答えよう。



でも実際は、そんなに想像通りの言葉なんて、省吾からは出て来ない。

わかっていても、私の重い足を進めるには、自分でそう言い聞かせるしかなかったんだ。

普通に話せば、いいんだって。




「ふぅ〜っ…。もうついちゃった」



『生徒会室』の表示板を見上げながら扉の前で大きく息を吐けば、体の奥からはもっと大きく振動が込み上げてくる。

たぶん省吾は、ここにいると思う。

一人かどうかは分からないけど、ステージの部門も終わったから、集計作業とかがあると思うし。

でも、私はなかなかその扉を開けられなかった。



「私だって、覚悟決めなきゃ…」



そう呟いてみても、前にのばす指先には全然力が入らなくて。



やっぱり、ちょっと怖かったんだ。

省吾に不満な顔をされること。
冷たい態度を取られること。

圭吾を選んでおきながら、省吾にも優しくされていたいなんて、そんなワガママなことは思ってないけど

普通に会話もできなくなるのは、やっぱり淋しい気もしたから…




「入るの入らないの。どっち?」


「…っ省吾」



突然後ろから聞こえて来た省吾の声で、私の心臓はもう壊れそうなくらい大きく胸をならした。

振り返って見上げる省吾の顔は、いつもみたいに笑ってるけど。



少し、違う気がした。