今はもう使われていない倉庫に男の悲鳴と何かが崩れ落ちる音が闇夜に響く。


「ぅぐえ・・・っ」


呻き声と共に強烈な蹴りが腹部に入ると、
男は数メートル先まで吹っ飛びドラム缶へ突っ込んだ。


「ストラーイク・・・ってか?」


あれ、何かちげぇな・・・まぁいいや
くるりと向きを変えると片腕を抑え蹲(うずくま)る男の髪を鷲掴みし、無理矢理顔を上げる。


「・・・っ」

「よぉ、気分はどぉだよ鳴海ちゃぁん」


クツクツと可笑しそうに笑う少年、犬塚 真守は鳴海を無理矢理立たせると数歩下がりつつ挑発をする。
余裕そうに腕を組む真守にふつふつと怒りが込み上げた。


「ほんと、アンタ化けもんだわ・・・軽く50
はいたンだけどなぁ・・・流石出雲の“守護神”サマ?」


ふらふらと重い足取りでそこら中に散らばった鉄パイプを握り締めると、最後の力を振り絞り地面を蹴る。


「仲間の一人でも拉致りゃあアンタを誘き出すなんざ簡単なことだからさぁっ、来たところを袋にしてやろぉと思ってたのにっ 返り討ちにしてくれちゃって・・・」


手にした鉄パイプを振りかざし、脳天目掛けてブォンッと風を切った。


「マジ死ね犬塚ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


怒りに任せて滅茶苦茶に振り回すが当たるはずもなく、それが鳴海の怒りを掻き立てた。
ブンッと真守の耳を掠(かす)めると、隙を見て鳴海の顎にアッパーを喰らわす。


「ーーー・・・ッ?!?!!」


脳を揺らすほどの攻撃に、鳴海は訳もわからず一回転し頭から地面に落ちると、そのまま意識を手放した。


「ったく、くだんねぇ競争心だかなんだか知んねぇがアイツは関係ねぇだろぉが・・・」


フンッと呆れたように鼻で笑うと、すぐに人質にされた仲間の元へと向かった。