「なんで笑うのよ」
「ごめんごめん」
微笑みながら立ち上がり、こっちに歩み寄ってくる慧。
・・・なんだなんだ。
ドキドキと心臓が鼓動を増す。
慧は私の目の前にまで来て、いきなり私を抱きしめた。
「・・・え、ちょっと慧?」
「優しすぎる姉ちゃんが悪い」
「はい?」
楽しそうに笑いながら慧は私を抱きしめる力を強くする。
「ちょ・・・離してよ」
「嫌なの?」
「・・・離してってば」
私は一応、抵抗する。
でも本当はドキドキして、嬉しくて、全然嫌じゃない。
むしろこのまま、ずっと抱きしめていてほしい。
私のことを、離さないでほしい。
・・・って。
私は何てことを考えてるの。
慧は“弟”なんだから・・・。
私は慧の“姉”なんだから・・・。
こんなこと、しちゃダメだ。
このままじゃ私・・・。
「嫌なら離す、嫌じゃないなら離さない」
「・・・っ」
「姉ちゃん、どっち?」
慧の綺麗な声が私の耳に響く。
・・・あぁ。ダメだ、私。
「・・・嫌、じゃない」
「じゃあ離さない」
そう言って強く、そして優しく私を抱きしめてくれる慧。
昔より随分大きくなった背中に、ドキドキしながらそっと手を回す。
・・・あぁ、・・・私。
───慧のことが、好きだ・・・。