───・・・
「別れて、ほしい」
いきなり言われた台詞に、私は大して驚かなかった。
目を見開いたりしないし、口をぽかんと開けたりもしない。
涙を流したりもしない。
どうして?って自問自答もしない。
だってこうなることを、いつも分かっているから。
「ん、分かった」
そう言って、目の前にいる彼氏“だった”人に手を振った。
「え、ちょっ、待てよ絢美」
私の行動が予想外だったのか、彼は動揺した声で私を引き止める。
「・・・なに?」
「いや、その・・・なんで別れたいのか、聞かないんだ?」
「・・・聞いてほしいの?言いたいの?」
「違うけど・・・」
「じゃあ、ばいばい」
今までありがとう、なんてお礼は言わない。
だってさ、一度も私を本気で愛してくれてはなかったでしょ?
だから私も、本気で愛そうとはしなかった。
“好かれてると思えなかった”
“絢美が何考えてるのか分からなかった”
“上手くいく自信がなかった”
どうせこういう別れ文句を言うつもりだったんでしょ。
・・・ばかみたい。
どうして愛されてもいないのに、私だけ愛さなきゃならないの?
「自分から告白してきたくせに・・・」
ぽつりと小さく呟いて、私は自分の教室に戻った。