「ずるいわ、自分のことは棚に上げて!」
『・・・とにかく、慧を頼む』
「・・・っ」
『絢美は・・・元気にしてるか』
「あなたは自分のことしか見えてない!」
『・・・今子供の心配をしたばかりじゃないか』
「表面上だけよ!子供のことを考えるならもっと別の方法があったでしょう?」
『離婚しない道が、あったといいたいのか』
「ええそうよ!もっと絢美や、慧の気持ち・・・考えてあげてよ!」
お母さん・・・。
お母さんも本当は離婚したく、なかったんだね。
私たちのことを、考えてくれていたんだね。
涙がまた頬を伝う。
『俺だって・・・俺だってそりゃ考えたさ!』
「嘘ばっかり!だったら他の女に構う暇なんてなかったでしょう!」
『・・・っ、智子のことはお前には関係ない!』
「関係ないですって?!慧が傷ついてるのよ!関係あるに決まってるわ!」
『慧は・・・応援してくれたんだ』
「あなたのためよ!そんなことも分からないの?!もう、いい!!」
『・・・』
「もう、私と絢美と慧に、関わらないで・・・っ」
『ちょっとま・・・』
───ガチャン!
お母さんは受話器を叩きつけ、その場にしゃがみ込んだ。
「どうしてよ・・・あなた・・・」
両手で顔を覆い、何度もお父さんの名前を呟いて泣き続ける。
小さくて、触れると壊れてしまいそうなお母さんの後ろ姿。
あぁ、お母さん・・・。
私以上に、お母さんだってずっと悩んでいたんだ。
ごめんなさい、ごめんなさい。
私だけ傷ついているんだと勝手に思い込んでいた。
私だけ被害者面して、お母さんの苦しみに気づけなかった。
ごめんなさい、お母さん・・・。

