暴走して、友に迷惑をかけたことだってある。
それでも、無力な侭は嫌だった。
“グオォオオオオ”
ファントム達は飢えたように此方を見る。
「うん。」
シエリアは頷く。
「それでも、私は大事なひとを守れなくて終わりなんてもういやだ。」
「……ならば。」
クラリスはシエリアに手を伸ばす。
「此処に居ろ。」
そう言って優しく撫でた。
「兄さ……」
「お前は私と同じ道を辿ってはいけない。」
クラリスはファントムへ攻撃する。
霧散しては襲い来るファントムを見て、シエリアは足を踏み出そうとした。
「下がれ!」
その叫び声に踏み出す足を止めた。
“ドゴォッ!!”
クラリスはファントムを叩きつける。
「無駄だよー?」
ルシエルは楽しそうに笑う。
「埒が空かないな。」
先程の衝撃で口の中を切ったのか、口の端から僅かに血が滲んでいる。
「生憎、妹が……家族が……守るべきものがある限り、負けるわけにいかない。シエンは渡さない。」
そして、メイフィスを見た。
「あいつも、お前らに渡しはしない。」
僅かに微笑んだ気がした。
「クラリスさま……」
メイフィスはエリミアから離れる。
「メイフィスちゃん?」
「あたしもたたかう、です。」
「下がっていろ。」
意を決したようなメイフィスにクラリスは言い放つ。
「いいえ!あしでまといはいやです。」
幼い口調で言うと、クラリスの方に走った。
「来るなと言っている。」
クラリスは地面を蹴り、衝撃波でメイフィスをエリミアの方へ吹き飛ばす。
「ぬぬー!!でも、やくにたちたいです!」
「私だって!戦う。みんなでやったらつよいんだもん!」
「お前ら邪魔するなら帰れ。」
尚も向かってこようとするメイフィスと反論するシエリアにクラリスは呆れる。
「メイフィスちゃん、シエリアちゃん。」
エリミアは苦笑して名前を呼ぶ。
すると、不意に突風が吹いた。
鈍い音をたてて、ルシファーが木へぶつかる。
ルシエルは相手を見た。
「逃げた方が得策だ。と、忠告しておこう。」
「……サタン。」
ルシエルは目を見開く。
「るし、える……」
ルシファーは今の衝撃で怪我を負った様子でルシエルを見る。
「器と罪人が同一化する。……“レヴィアタン”以来の例外だ。」
「そんなこと、神が許すの?」
「さぁ、な。」
ルシエルはルシファーを支えて立ち上がった。