「“サタン”へ戻るのだろう？今の“ヴォルフラム”には死んでもらう。」
「待て……」
「案ずるな。あの者は守ってやる。」
そう言うと、力を込めた。
骸が這い寄り、喰らう。
サタンの牙がヴォルフラムの喉を掻っ切った。

「フラン！！」
クラウジアの叫びと共にヴォルフラムの身体が地面へ倒れた。
「何だ？燃料切れか。」
ルシファーは怪訝そうにする。
「おい！しっかりしろ。返事をしろ。フラン、フラン！！」
クラウジアはヴォルフラムを抱きしめる。
「……くら、うじあ。」
そう呟いて彼女は目を開く。
「貴様を、俺は……」
虚ろに言葉を出して起き上がるとクラウジアを見据えた。
「そうだ。まもらなければ、ならない。」
確かめるように口に出すとルシファーを見た。
「罪人よ。我らが同胞。……世界の秩序を守るべき神からの使者。その者が愚行に走るなど。」
「裏切り者に言われたくはない。」
愚かだと言う彼女にルシファーはグリフォンで攻撃をする。
「悪はこの世に俺ひとりで充分だ。故に、排除する。」
グリフォンをかき消すと、間合いを詰めて攻撃をする。
（何だ？先程とは桁違いの戦闘力……）
ルシファーは目を見開く。
「黎明の天使……貴様はその言霊通りに、天から落ちた存在。」
彼女はルシファーへ爪を振り下ろす。
「裏切り者は、貴様も同じだ。」
鮮血と共に、ルシファーは後退する。
「神を欺き、頂点へ立とうとして天使の権限を奪われ、投獄された。」
「それが何の関わりがある。我は既に許された存在なのだ。」
「……神が許せども、俺は許さない。」
彼女は大きく飛躍する。
「それが、俺の役割だ。」
覚えるように口に出した言葉と共に地面が抉れる。
「——“サタン”。今日から俺がこの世の憤怒を司る。」
「器ごときが、」
「いいや。」
「！！」
声と共に、彼女の隣へサタンが舞い降りた。
「最初の俺へ還る。……それが、俺の選択だ。」
「フラン。」
クラウジアはヴォルフラムに触れようとした。
“パシッ”
酷く冷たい視線でクラウジアの手を振り払う。
「その名を呼ぶな。」
彼女はそう言って、サタンに触れる。
「“ヴォルフラム”など、もうこの世界には居ない。」
「あぁ。そうだな。」
サタンが頷くと彼女の身体が壊れた硝子のように、ひび割れ、侵食していく。
「フラン！！」
クラウジアは手を伸ばす。