いつしか私も退院した。

母は再婚し、新しい父親も優しく私を迎えてくれた。

姓が変わっても、学校でも私はうまくやっていけた。

そして、車も運転できるようになった私は、向かっている。

懐かしい海に。

右腕にはブレスレッドをつけていた。

車から降り、スケッチブックを開いて海と比べてみる。

海はあまり変わっていなかった。

変わったのは私の背丈で、目線が高い。

ペラペラとスケッチブックをめくる。

様々なポーズの彼女が写し出されている。

目頭が熱くなる。

もう一度、会えたなら。

「水のあなたに曝したる 布の岸打つ 白波 近寄り見れば 卯の花の 盛りは今ぞ 面白や
やっぱり、君は絵がうまいねー」

その声はあの、懐かしい―――。

「約束、だね」