離婚届を出したときは本当に母を殺すのではないかと思わせるほどに荒れた父親だったが、母方の親戚がこぞって離縁に協力した。

父の虐待は、私の体だけではない。

心もずたずたに引きちぎり、破り去った。

過度の恐怖ゆえか、母以外の人物に近づくと呼吸がままならなくなる、対人恐怖症を患った。

「あらあ、どこに行くの?」

トイレに行く途中だったろうか、何気なく看護婦に止められた。

看護婦に悪気は無い、ただ、知らなかっただけなのだ。

そのときにとっての私には『知らない』と言うことがいかに怖いことだったか。