「来たれや友よ 打ちつれて 愉快に今日は 散歩せん
 日は暖かく雲はれて けしき勝れて よき野辺に」

歌は、久しぶりに聞いた、そんな娑婆っ気のあるものは本当に久しぶりで、乾いた心に落
ちる一筋の水滴かのように。

目を閉じて、歌に浸る。

風が楽器の代わり、太陽がバッグライトの代わり、心に残る一つのステージ。

「にはは、変かな?」

「綺麗だね」

目を閉じたまま聞き入る。

「じゃ、続ける
空気の清き野いでて 唱歌わん もろともに 急げ花在る所まで 急げ草つむ処まで」

昭々として、空気のように、歌が時間とともに流れていく。

その日は夕日が沈むまで歌を聴いていた。