だんだんと、人とのコミュニケーションがとれるようになった。

お母さんにも「よくしゃべるようになったね」と言われた。

彼女のことは話せなかったが、景色や風の香りを饒舌に語ったのだ。

隣を人が歩くだけでも怖かった私が堂々と道を歩く。

いつもの大木の下、何かに期待を寄せながら、私は昨日書いた海の絵を眺めていた。

背中に軽い衝撃、本当に軽い衝撃。

だが、この衝撃が私を外の世界へと続く扉を開いてくれた。

パァっと明るくなる顔を抑えて彼女のほうへ振り向く。

「海、行く?」

私は葛藤の末、そっぽを向くと。

「まだ、行かない」

そんなやせ我慢の私を見て、にははと彼女は笑った。