「悪いが誰かこいつを駅まで送ってくれ。あと、俺もこいつも出掛けるから昼は要らない。」
お父さんがそう言うと、家政婦さんは私をちらっと見るとこう言った。
「かしこまりました、ではお嬢様は駅にお送りいたします。正面に車を回してまいりますのでお待ちくださいませ。」
結構ですと言いたくなったけれど、一礼して去っていく家政婦さんに話しかける隙はなかった。
「そういうこった。お前は俺の娘なんだからそうやって堂々としてりゃいい。命令しろとは言わないが、家政婦にお願いをするのは当たり前なんだからな。」
「・・・・でも、なんか申し訳なくて。」
「向こうも仕事だ。別にただで雇ってるわけじゃない。だから何かあればお願いすりゃ良い。」
「ありがとうございます。」
私がそう言うとお父さんは新聞を畳んで、立ち上がった。
「俺も出掛けるんでな。ちゃんと5時には帰れよ。」
「はい。」
私がそう言うと、お父さんは付き人を連れてリビングを出て行った。
私も慌てて後を追ってリビングを出ると、重い玄関の扉を開けて外に出た。
外に出ると、直ぐ目の前に車が一台停まっていた。
私が近づくと中から家政婦さんが降りてきて、後部座席の扉を開いてくれた。
「ありがとうございます。」
一応そう声を掛けたけれど、家政婦さんは乗り込む私に一礼して静かにドアを閉めた。

