部屋は何事もなく綺麗だった。
机の上も、ベッドの上も、大丈夫、見られてはいけない物はないし綺麗に整理されている。
私はそれに安心して部屋を出ると、きちんと鍵を閉めて急ぎ足で階段を降りた。
玄関を出ようとした瞬間、私はあることに気がついた。
それは食事がいらない時は家政婦さんに伝えなきゃいけないことを思い出してしまったのだ。
私は慌てて踵を返すと、キッチンに向かうためにリビングの扉を開けた。
扉を開けると、暖炉の前のソファにはまだお父さんの姿があった。
優雅にコーヒーを飲みながら、今度は何やら違う新聞を読んでいる。
私にはその文字が読めなかったから、多分英語以外の文字で書かれている。
「お?お前出掛けたんじゃねぇのか?」
私の姿に気付いたお父さんはそう言って暢気に欠伸した。
「出かけます、ただご飯要らないって言うの忘れてしまって。」
「ああ、そうか。11時に待ち合わせって言ってなかったか?」
「そうです、だから今から行きます。」
私がそう言うと、お父さんはテーブルに置かれたベルをチリンと鳴らした。
すると直ぐに家政婦さんが私達の元にやってきた。
私達を見て一礼すると、家政婦さんはまた機械的な声で話し始めた。
「ご主人様、お呼びでしょうか?」

