「そ、そうだよね。忙しいのにごめん。」
私はそう言って何だか泣きたい気分になってきた。
シオンは私とは違う生活をしているのだから、それは当然だろうと思ったけれど、何だか寂しい気持ちになった。
私の言葉にシオンは無言だった。
「あ、あのね、一つだけ聞いてもいい?」
“・・・なんだ?”
「シオンのつけてた香水って、何ていうの?」
“・・・そんな事聞いてどうする?”
「知りたいだけだよ。」
私がそう言うとシオンはまた微かに笑ったような気がした。
“相変わらず知りたがりだな。クライブクリスチャンだ”
「・・・クライブクリスチャン?」
“ああ。”
「分かった、ありがとう。レオンとママは元気?」
“ああ、うるさいくらいだ。”
シオンの言葉に、何だかとても温かい気持ちになった。
「また、電話しても良い?」
“ああ、構わない。”
「じゃあ、また掛けるね。おやすみ。」
まだやる事があると言ったシオンに長話をするわけにもいかないし迷惑も掛けたくなかったので、私はそう言った。
本当はもっと声を聴いていたいけれど、それでも声が聴けるだけで今は充分だ。
“・・・・おやすみ。”
囁くようなそのシオンの言葉が聞こえた途端、電話は直ぐに切れてしまった。
だけれど私は充分、満足だった。
こうして少しでも声が聴けるだけでこんなにも幸せだと感じるなら、実際会えたら私は幸せすぎて気を失ってしまうかもしれないなんて、少しだけそう思った。

