「ごちそうさまでした。」
私がそう言って立ち上がると、私よりも早く食事を終えていたお父さんも一緒に席を立った。
何となくだけれど、お父さんがソファに移動する気がしたので私も昨日と同じ場所に座る。
案の定お父さんは私の向かいに座ると、持ってきた新聞をテーブルにそっと置いた。
直ぐに家政婦さんが昨日と同じ、飲み物の確認をしにきた。
お父さんはコーヒーと言ったけれど、私はやっぱり紅茶を頼んだ。
「そういえば、今日出かけるんだったな?」
家政婦さんがキッチンに向かうと、お父さんはそう言っていつものように葉巻を咥えた。
「はい、11時に約束があります。」
「そうか、じゃあこれを持っていけ。」
お父さんはそう言って、ワイシャツの胸ポケットから二つに折り畳まれた一万円札の束を私の目の前にポンと投げた。
私はそれに驚いてお父さんの顔をじっと見た。
「小遣いだ。足らなきゃ言え。」
お父さんは何でもない風にそう言って、葉巻に火をつける。
「・・・あの、こんなに必要じゃありません。」
どう見ても分厚いその札束に、私は躊躇した。
「必要か、必要じゃないかは俺が決める。それにその髪の毛もいい加減綺麗にして来い。綺麗にするのには金がかかるだろうが。」

