叶う。 Chapter3





″悪いが、授業が始まる。"


シオンが冷たくそう言った。

それと同時に騒がしかったシオンの背後が静かになった。


「ご、ごめん、あの……また電話して良い?」


恐る恐る、シオンにそう尋ねるとシオンは微かに笑って小さくこう言った。


″そっちの時間なら、朝の7時から8時くらいか。そのくらいが都合が良い。勿論いつも出れる訳じゃない。″


「わ、分かった!ごめん。」


私がそう言うと、シオンは直ぐに電話を切った。


急に切られたけれど、不思議と嫌な気分にすらなかなかった。

私はそのまま携帯を抱き締めて目を閉じた。


シオンと話せた。

たった数分だけれど、それでも充分だった。



例え内容の無いつまらない話でも、こうして声を聴くことが出来るだけとても幸せなんだと思った。

そんな私をシオンはうざいと思っているかもしれないけれど、本当に嫌なら電話ですらきっと話してくれないだろう。

そう思ったら急に嬉しくなって、私は一人ベッドでごろごろと転がってしまった。


それでも、何だか気持ちがとても高揚していて落ち着かなかった。


私はゆっくりと起き上がるとお風呂に入ろうと思ったけれど、クローゼットの前に置かれた二つの大きなスーツケースに視線を向けた。

流石に着替えは収納してくれていなかったようで、私は慌ててスーツケースを開くと全部の着替えや下着なんかをクローゼットに片付け始めた。